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糖尿病の第六合併症として歯周病があります。血糖値をコントロールすることで歯周病が改善するということです。また、歯周病を治療すると糖尿病も改善するケースがあることが明らかになってきました。歯周病は、グラム陰性嫌気性菌である歯周病関連細菌による感染症です。歯周病原因菌はLPSという内毒素(細菌が死んでも人体には毒)を産生します。LPSは血小板凝集作用を示します。歯周病菌のPG菌が産生するジンジパインが血管内皮細胞を破り毛細血管内に入り込むようになると、心筋梗塞や細菌性心内膜炎の原因にもなります。重症化した歯周病では歯周組織が弱く歯ブラシで容易に出血するため、歯周病細菌の塊が直接生体に入り込むイメージです。この時の面積は手のひらサイズになると見積もられています。そこから毒素が体に入り続ける状況が維持されます。この時、体を守る免疫システムを高度に活性化する物質を多量に産生します(TNFα)。また、肥満になると内臓脂肪組織でTNFαを多量に産生するようになると言われています。つまり、昔に比べ、若干体重が増加し脂肪組織が成熟してきた方が、TNFαが多く作られることがわかってきました。実は、このTNFαがインスリンの効きを障害しています。つまり、何も高度に肥満を呈していなくても、歯周病のような盛んに内毒素を産生する菌に多量に感染し、毒素が容易に体内に侵入する出血しやすい歯周病の進行した状態では、体が毒素を排除する際に、本来太った方の内臓脂肪で産生されインスリンの作用を障害する物質と同じTNFαを作っています。それが同じようにインスリンの働きを障害してしまうため、血糖値が下がりにくい状態であることがわかってきました。インスリン抵抗性により、血糖値の管理が困難になります。よって歯周病をきちんと治療して、内毒素を排除(生体への侵入を断ってやる)すると、TNFαの産生が低下するため、血糖値の改善が期待できると考えられるようになりました。一般に歯周治療で改善する糖尿病HbA1cは平均0.4%くらい低下すると言われています。これは、糖尿病の治療薬の1剤分に匹敵するといわれています。したがって、重度の歯周病を併発した糖尿病患者さんは、糖尿病そのものの管理の一環として歯周病も同時に管理してもらうことが重要です。そのためには、かかりつけ内科医と歯科医を定期受診することをお勧めします。最近では、糖尿病手帳に歯科受診の記録も記載できるようになりましたので、これを活用して歯科と医科の主治医との間で連携が始まっています。