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口腔内細菌叢を取り巻く温度、湿度、pH、栄養、嫌気性など環境によってある種の口腔細菌が病原性を高めることをマイクロバイアルシフトといいます。高病原性にシフトした状態のバイオフィルムは歯周組織の間の均衡が崩れ、歯周病が発症、進行していきます。

バイオフィルムの中に高病原性であるプロフィロモナスジンジバリスなどのレッドコンプレックスが定着しているとマイクロバイアルシフトが起こりやすくなるとともに、より病原性の高いバイオフィルムへのシフトが起こると考えられています。バイオフィルム中の細菌はクロラムセンシングといって共生することで、バイオフィルムの病原性が高められていきます。歯周病の治療でセルフケアとプロフェッショナルケアが継続的に必要です。歯周病の発症を抑えるには歯周病菌が増殖しにくい環境にすることが必要です。すなわち、マイクロバイアルシフトが起こらないような環境づくりなのです。プロフェッショナルケアでは、歯石、バイオフィルムの破壊により、細菌数を低下させることで、ブラッシング時の出血の低減が最重要と考えています。一宮苅安賀歯科こども歯科では、このような歯周病に対する理論で歯周病治療に取り組んでいます。以前は歯周病の原因菌をPCR検査で特定し内服薬で除菌、殺菌すれば治ると考えられていました。しかし、口腔内細菌を完全に除去できないこともわかってきました。100%無菌状態にすることが不可能と分かった現代では、菌とともに共生して口腔内のバランスを保ち病原性がない安定した口腔状態を維持するという考え方に変わってきています。虫歯菌も歯周病菌もお口の中に常に存在している常在菌であり、取り除いても時間が経てばお口の中に再び定着します。原因菌が完全に除去できない以上、残念ながらむし歯も歯周病も「治らない」と言わざるを得ません。では、私たちはこの疾患にどう立ち向かえば良いのでしょうか。その答えは・・・細菌と仲良くしていくことです。どこかで聞いたような気がしませんか?with コロナみたいな感じですね。